特定非営利活動法人 グリーンラインを愛する会

11,こんなゴミあんなゴミ

11,こんなゴミあんなゴミ

拾っても拾っても増え続けるゴミとの格闘を続ける内に、行政の我々を見る目も徐々に好意的なものへと変化していった。マスコミの協力も有って市民の認知度も上がってきた。徹底した「不法投棄犯」探しや、ゴミを捨てにくくする工夫も効果を現し始めた。このようにしてグリーンラインのゴミ事情は少しずつ変化をし始めていた。

実は変わったのはこれだけではなかった。私たち自身の内面も変化し始めていた。たとえばある会員は言う。「今までタバコの封を切るときに、そのゴミを何の気無しに車の窓から捨てていた。でも、グリーンラインで人が捨てたゴミを拾っている内にそれが出来なくなった。」またある会員はこう言う。「観光地に行って、ゴミ箱があってもその中に入れて帰れなくなった。だってゴミ箱の中に入れて帰ったゴミは、誰かが片づけてくれていることを考えるとそれは出来ない。」

またグリーンラインで不法投棄のゴミの山をかき分けながら、捨てた人への怒りだけだったものが、捨てた人のことを考えるように変わっていった。捨てられたゴミを通して、捨てた人の心や暮らしが見えることに気付き始めたのだ。今回はそんなエピソードをふたつみっつ紹介したいと思う。

 

最初は「結納セット不法投棄事件」(笑)から紹介しよう。それは有る雨上がりの朝だった。私と会員のH君とはグリーンラインをパトロールしていた。上り坂のカーブを曲がったとき、私は路側にある何か鮮やかな色に気付いた。「H君車止めて。あそこに何かある。」

近くに車を止め、近づいた私たちが見たものは結納セットだった。白いのし袋に金銀の水引。三宝もある。「一体誰がこんな物を・・・。」私たちは信じがたい不法投棄に暫くとまどっていた。

「大体なぁ、こんな所にこんな物を捨てた奴って、破談になって腹立ち紛れに捨てたんだろうが、こんな事をする奴がまともな結婚なんて出来るもんか!結婚したってろくな家庭が作れるわけないじゃないか。」最初はそんな風に腹を立ててはいたが、そのゴミを眺めている内にだんだん別の考えが浮かんできた。

「捨てたのはご本人だろうか?それとも親御さんだろうか?多分今でも破談になった相手を恨んでるんだろうな。腹を立ててるんだろうな。でも、気付いては居ないだろうな。たとえ破談になったからと言って、「固めのしるし」をこうして捨ててしまう心の貧しさが、ひょっとしたら破談の原因の一つになっているかも知れない。でも、相手を恨みこそすれ、自分たちを振り返ってみるだけの謙虚さはこの人にはないだろうな・・・。」そう考えれば、こうしてここに捨てに来た人の心の貧しさは気の毒でもある。

また、ある時は後山公園の焼却場の脇に段ボール箱に入ったゴミが捨てられていた。開けてみると中には手紙やノートなどが入っていた。そのゴミをかき分けていた会員のNさんが、手の甲で目頭を拭っている。怪訝そうな私の視線に気付いたNさんが私に話しかけてきた。

「丸山さん。電気代とか、水道料金とか、いっぱい督促状が入ってますよ。電気を止めますって書いてあるのもある。それに・・・これ見てください。」Nさんが差し出した封筒はM高校の名前入りの封筒だった。中に入っていたのは授業料の督促状だった。

「丸山さん。その子の名字とお母さんの名字が違うでしょ。きっと母子家庭で、暮らしに行き詰まって夜逃げでもしたのかも知れませんね。かわいそうに・・・。この母子・・・今どこで、どんな暮らししてるんでしょうね。早まって軽はずみな事してなきゃ良いですね・・・。」私とNさんはゴミを捨てた人に怒りを感じるよりは、この親子の今の暮らしを思って、哀れさに暫くそのおびただしい督促状を見つめていた。

またある場所には家財道具と一緒に、学校の制服やアルバムが捨てられていた。制服にはネームが入っていた。アルバムには家族の写真がそのまま残っていた。机には子供の落書き・・・。私はその制服や写真を眺めながら考えていた。

「ここに捨てられているのは家財道具ではない。捨てた人の過去が、家族の暮らしが捨てられている。この家族は何を捨てたかったんだろうか?捨てて省みない家族の暮らしとは、どんな暮らしだったんだろうか?」

それを考え始めると怒りよりも悲しみが増してきた。このようなゴミと出会うたび私たちはしばし立ちつくしてしまうのだ。

 

ゴミを捨てることは違法行為である。しかしゴミを捨てることには別の意味もあると私たちは気づき始めた。それは自分自身の生活を人目にさらすことであり、己の裸の心、裸の人間性を人目にさらすことなのだ。また産業廃棄物で有ればその企業の品性を人前にさらすことなのだ。

家族の暮らしをそっくりそのまま車に積んで、捨てに来る人がいる。忘れたい過去をゴミに託して捨てに来る人がいる。真新しいおもちゃや、まだ充分使える家具を捨てに来る人もいる。わずか数千円のリサイクル料金惜しさに冷蔵庫やテレビを捨てに来る人もいる・・・。まともな経営者の会社なら、決して捨てないだろうと思うようなものが、産業廃棄物として捨てられる・・・。みんな、みんな、悲しいくらいに貧しい。経済的にはともかく、間違いなく心はとても貧しい。「たとえ誰が捨てたか分からないにしろ、不法投棄をすると言うことは耐え難く恥ずかしいことなのだ。」私たちはそう考えるようになっていった。

taiyo11
2001年10月 不法投棄された結納セット

大陽新聞連載~よみがえれグリーンライン~

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