特定非営利活動法人 グリーンラインを愛する会

9,縦割り行政、縄張り仕事の狭間で

9,縦割り行政、縄張り仕事の狭間で

「愛する会」が2000年にスタートして、その年の秋から現地での清掃活動を始めた。しかし拾っても拾っても、まるで我々をあざ笑うかのようにゴミは減らなかった。会社関係の人たちの中には「企業イメージのアップをねらうには少し無理があるね」とか「あんたは名前を売って市会議員にでもなるんか?」と言う声も聞こえてきた。私の友人の中にも「社長が道楽にうつつを抜かして会社を傾けたという話は良くある話だ。今はまだ会社に全力集中するべき時だ。ボランティアなどと言うものは定年後にやるべき事だ。」と忠告してくれる者も居た。誰も私の思いを理解してくれなかった。会員の中には諦めて去ってゆく人もあった。

しかし私は信じていたのだ。「地域への直接的な貢献は企業の大事な事業の一部だ。決して余裕が出来たからやろうというようなものではない。それを全社員に理解させ、全社員がこの様な事業にも汗を流してくれることが、必ず会社の大きな発展の原動力になってくれる。」

話しは少し横道にそれるけれど、私の経営する「北斗電機工業株式会社」は先に述べた理念以外にも、普通の会社の普通の人たちには理解しにくい理念が幾つもある。たとえば以下のような理念を持っている。

「納期がない、予算がない、持って行き場がない・・・ウチが断ればお客様が困るような仕事は出来るだけ断るな。」

「物やサービスを買って下さるお客様には出来るだけ安く。物やサービスを売って下さるお客様には出来るだけ高く。」

いずれも普通に考えれば「それではもうけは薄くなる。」と思うのが普通であろう。同様に企業がお金にもならない地域貢献などに貴重な利益と、労力をつぎ込むのは無駄と考えるのが常識というものかも知れない。

しかし、これらの理念の正しさは事実が証明してくれている。ここ数年北斗電機工業株式会社は利益の面でも素晴らしい実績を残すことが出来た。営業拠点も増え、社員の数も順調に増え続けている。本当に厳しい工程をこなしながら、「愛する会」の月例会には10名近くの社員が参加してくれる。無論「社長へのごますり」などではない。

「正しい理念」は「正しい考え方」を生みだし「正しい言動」へと繋がり、それが一人一人の社員を技術者としてだけでなく、人間としても大きく成長させる。そしてそれが会社の利益に繋がっていったのだ。

しかし、このような成果が目に見えるようになったのは最近のことである。当時は最初に書いたような状況の中、私も少々戦意を喪失しかけていた。

そんなところに素晴らしい助っ人が登場してくれたのである。それは当時の福山市役所の観光課長、大浜氏であった。氏との出会いがなければ、ひょっとしたら私は途中で挫折していたかも知れないと思う。

「愛する会」のスタート当初にぶつかった壁の一つは「行政の壁」であった。たとえば不法投棄のゴミひとつとっても、不法投棄の取締は警察の仕事である。しかし、不法投棄のゴミの撤去責任はその場所が県道であれば「地域事務所建設局」県立公園であれば「地域事務所農林局」国有林であれば「森林管理署」・・・。そしてゴミの回収自体は福山市の環境部の仕事である。

ある時このようなことを言われた。それは県道沿いの不法投棄のゴミの回収に県の協力を仰ごうとして現場に同行して貰ったときのことだった。その職員がこう言ったのだ。「このゴミは国有林にも及んでいますよね。道路側のゴミは確かにウチの所掌ですから、回収の手配はしますが、国有林の中のゴミはウチが勝手に処理できないので森林管理署にお願いしてください。」

私は怒りを飲み込みながら精一杯の皮肉で応酬した。「分かりました。じゃ県道と国有林の両方にあるこの布団は真ん中から切り分けて撤去して貰えるんですね。」

これだけではない。何か問題が発生して相談に行くたびに言われ続けたのは「それは市の仕事です。市の何処?それは市役所で聞いて。」「それはウチではなく○○の担当だと思うので、まず○○に行って相談して。」かくして私は市役所の中を歩き回り、市役所と地域事務所の間を往復させられ、何の成果もないまま疲労と挫折感だけが蓄積して行くのだった。

そんなときに出会ったのが大浜観光課長(当時)だったのだ。出会いから暫くして市役所を訪れた私に彼はこう言ったのだ。「丸山さん。確かに行政には行政側の言い分や事情がある。でも、それはこちらの都合だ。丸山さん。グリーンラインに関するどんな要望も、相談も、全部僕の所に持ってきて下さい。僕がそれは県の仕事だと思えば県に、国の仕事だと思えば国に、橋渡しをします。無論出来ないことは沢山あります。市役所の人間としての制約もある。でも、グリーンラインをきれいにしたい。福山を良い街にしたいという思いは丸山さんに負けないつもりです。お互いの立場を尊重しながら協力しましょう。」

それは今まで何処の役所でも聞いたことのない言葉だった。そしてそのころから徐々に市役所の中にも、地域事務所の中にも、それ以外の国の出先機関の中にも、私の思いを理解し、それぞれの立場で協力し合おうという人たちが徐々に増えていった。

taiyo09

毎回自主的に参加をする北斗電機工業株式会社の社員達

大陽新聞連載~よみがえれグリーンライン~

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